滋賀県立陶芸の森は美術館と滞在型スタジオを備えた、全国でも数少ないやきものを専門とした県立文化施設です。平成4(1992)年の開設以来、48カ国860人以上のアーティストが信楽を訪れ、制作活動を繰り広げてきました。その取り組みは広く国内外で認知されるとともに、産地の動向と関わりつつ、新たな滋賀の文化の形成にも寄与しています。
陶芸の森のアーティスト・イン・レジデンス(滞在制作)での経験を活かして、世界を舞台に活動を展開するアーティストも少なくありません。なかでも若手中堅世代の幅広い取り組みは、次代を担う表現として期待されています。また、20年にわたる活動で培われてきた国際色豊かなネットワークは、多様な出会い・交流の機会をもたらしてきました。 本展では、近年活動が注目されている30代・40代のアーティストを中心に、彼らの取り組みを紹介。現代の陶芸を象徴する「場」となるべく、陶芸の森が試みてきたアーティスト・イン・レジデンス活動の成果から、これからの陶芸の展望をみつめます。
企画概要
第Ⅰ部 胎動と予感・気鋭の作家たち
第Ⅱ部 国際色豊かなネットワーク
第Ⅲ部 現代美術作家の陶芸への挑戦
第Ⅳ部 新たなうつわの創造を目指して
主催・後援および助成金等組織
主 催:滋賀県立陶芸の森 京都新聞社
後 援:滋賀県教育委員会 甲賀市 エフエム京都
助 成:芸術文化振興基金
会 期
平成25年6月18日(火)~9月23日(月祝)の86日間
〔休 館 日〕月曜日 ただし、7/15・8/12・9/16・9/23は開館[7/16(火)・9/17(火)は振替休館]
〔開館時間〕9時30分~17時(入館は16時30分まで)
観覧料
一般/500円(400円)・高大生/380円(300円)
中学生以下無料
※( )内は、団体20名以上の料金
関連行事
体験講座はすべて事前申込制(応募多数の場合は抽選)
(1)ギャラリートーク(学芸員による展示解説)
日 程:7月14日(日)、8月11日(日)、9月15日(日)
時 間:各日程とも13時30分から(1時間程度)
(2)展覧会出品者によるオープンスタジオ
展覧会に出品しているアーティスト・イン・レジデンスOB・OGによるレクチャーとワークショップ(公開制作)を開催します。
平成25年7月7日(日)10:00~16:30 (アーティスト・トークについては、14:30~16:30)
出展者:谷内 薫・小島 修
平成25年9月8日(日)10:00~16:30 (アーティスト・トークについては、14:30~16:30)
出展者:清水真由美・青木 拳
(3)一般向け体験講座「しがらき学ノススメ!」(事前申込制)
①上絵付けに挑戦しよう!
日 程:6月30日(日)講 師:渡部味和子氏(出品作家)
②“練りこみ技法”でうつわをつくろう!
日 程:7月14日(日)講 師:村田彩氏(出品作家)
※時間は①②とも、10:30~16:00
(4)子ども向け体験講座 陶芸家に学べ!この夏、あなたは一番弟子だ!(事前申込制)
①音のでる土の打楽器をつくろう!
日 程:7月21日(日)講 師:髙間智子氏(出品作家)
②物語をたくさんのせた土えほんづくり
日 程:7月27日(土)講 師:津守愛香氏(出品作家)
③赤、白2色の土で器づくりだ!
日 程:7月28日(日)講 師:北本裕二氏(出品作家)
④ティータイムの器づくり
日 程:8月3日(土)講 師:大西左朗氏(出品作家)
※時間はどの講座も、10:00~16:00頃
第Ⅰ部 胎動と予感・気鋭の作家たち
陶芸の森でアーティスト・イン・レジデンス事業が立ち上げられた1990年代は、土の造形性とメッセージ性に注目し、その可能性を追究しようという動きが、ピークを迎えようとしていた時代です。時代が移り変わりゆくなかで、その様相はどのように変化してきたのでしょうか?
ここでは30代から60代の幅広い世代の作家を取り挙げつつ、彼らのやきもの像と時代認識をめぐる多様な視点や、各世代の共通点や世代間の相違について模索していきます。

度會 保浩
Window – Futamono
2013年
75.5×75.5

内田 恭子
白人間 ─ごれん─
2012年
26.0×40.0×8.0
第Ⅱ部 国際色豊かなネットワーク
日本ではあまり前例のない事業としてスタートした陶芸の森のアーティスト・イン・レジデンス。その最も大きな特性は、国際性にあるといえるでしょう。これまで、48カ国860人を超える作家を受け入れています。
20年以上に及ぶ活動のなかで、国外での“Shigaraki”“Shiga”の知名度を高め、陶芸を軸に国際色豊かなネットワークを構築してきました。ここでは、近年の特徴的な動向を捉えながら、陶芸の森のネットワークの最新事情を紹介します。

ヌルディアン・イッサン
無題
2008年
壁:36.5×91.0×10.5
人:22.5×10.3×18.2
所蔵:公益財団法人滋賀県陶芸の森

廬 嬿宇
無題
2012年
35.2×17.6×11.2
所蔵:公益財団法人滋賀県陶芸の森
第Ⅲ部 現代美術作家の陶芸への挑戦
陶芸の森のアーティスト・イン・レジデンス事業では当初より、建築や民族学など周辺領域との関連性を念頭においた取り組みが試みられてきました。これまで、画家や彫刻家など、さまざまな分野の芸術家たちが、陶芸の森を舞台に制作活動を展開しています。
とくに近年では、そうした芸術家たちの取り組みや活躍が注目を集めています。素材や技術の制約をものともしない彼らの姿勢には、むしろそれを新鮮な面持ちで楽しむ高揚感が感じられます。

レイコ・イケムラ
うさぎ観音
2013年
338.5×120.0

桑名 紗衣子
The aspect to tableware
(Skull on Books)
2012年
27.2×28.4
第Ⅳ部 新たなうつわの創造を目指して
手に触れ、目で眺め、心で愉しむ…。
「うつわ」は生活に最も身近な「やきもの」です。
土の質感に釉薬、化粧や絵付け、焼締め陶にみられる土肌の趣きなど、「やきもの」の装飾性は「うつわ」を中心に、多彩な広がりをみせてきました。陶芸の森でも多くの作家が、そうした伝統や特性をベースに新たなうつわ像を追究しています。
ここでは、デコラティブやシンプルをキーワードに、自身のやきもの像や心象をうつわに表現する作家を紹介します。

清水真由美
上:Bowl (黄)
2012年
5.4×13.0
下:Bowl (緑)
2012年
5.9×13.0

山田 晶
左:猩々緋葉紋器
2012年
54.2×31.8・17.7×14.2
右:漆黒線紋器
2012年
41.9×27.1・16.8×11.0